ドクターズコラム 不妊症の予防医学

最近の不妊患者さんは、子宮内膜症や性病のクラミジアの感染により卵管が癒着し、卵子の取り込みに問題がある方や、排卵する卵胞が小さくて成熟卵が出ていない方が全体の80%を占めています。それは妊娠を希望する年齢が30歳を過ぎると、20代に妊娠した事のないほとんどの女性が、次第に生理周期が短くなり(生理周期が27日未満は異常です)成熟した卵子を排卵する頻度が減少し、未熟な卵子を排卵しはじめるからです。これは一種の老化現象であり仕方ありませんが、高齢で初めて出産に臨む女性が増えている現代病の一つと考えられます。これを防ぐためには若い時期に妊娠する事です。つまり、簡単に予防出来る事なのですが、年齢を遡る事はもちろんできません。

子宮内膜症にしても20代から妊娠出産をして、1年や2年妊娠や授乳によって生理が止まっていれば症状の進行も遅らされ、こんなに問題としてクロ-ズアップされることも無かったように考えられます。また、クラミジアにしても、罹患しても痛みや発熱といった厳しい症状がない事や、エイズほどの悲劇がないせいか最近の若年層に顕著な傾向として見られるフリ-セックス状態により、かなりの速度で蔓延しています。しかし、子宮内膜症とクラミジアは予防が可能です。

 

子宮内膜症

子宮内膜症は、20歳以降に生理痛や、セックス時のお腹の痛みの出現や、生理の量の増加(一番多い日に夜用のナプキン一枚で朝までもたない人は、かなり多い人です)に気がついた方は、産婦人科で検査をする必要があります。産婦人科での治療で完全に治すことはできませんが、その進行を抑えて将来の妊娠に備えておくことが出来ます。実際そうやって結婚まで治療を行い自然に妊娠された方々が大勢いらっしゃいます。継続的な予防的指導が大事なのです。

 

クラミジア

次に性病のクラミジアですが、男性女性共に痛みなどの明確な症状が無いために、ひどくすると男性は精子が詰まって出てこなくなり、女性は卵管が詰まってしまいます。女性の場合、それまで無かった排卵痛や生理前痛、生理痛が出現したり黄色いおりものが増えることが多いようです。男性はあまり症状が無いようですが、時に睾丸に痛みが出ることがあります。風俗産業に関係のない普通の方でも4人以上コンド-ムも使わずにセックスすれば高確率で感染するものと考えてください。そういう方は症状がなくてもクラミジアの検査治療をすべきです。知らないうちに子供が出来なくなってしまいます。大切な方にうつしたくないならそういった経験のある男女は検査をしておくとよいでしょう。

 

生理不順

さて、予防という面からいえば、もう一つ予防できる病態があります。生理が半年から一年も来ない方や、基礎体温表をつけてみて、出血はあっても高温になる時がない方です。こういった生理不順で無排卵の方に対し不勉強な医師は、生理を薬で来させるだけで済ませている場合があります。しかしそれでは卵巣が働くことが無く、石の様に硬化してしまい機能しなくなってしまいます。以前そのような状態で管理され、その揚げ句に早発閉経(生理が若くしてあがってしまった状態)だと他県の病院で診断され、もう子供は無理と言われ泣く泣く来院された方がありましたが、かろうじて治療が間に合い現在妊娠されています。また、岐阜の他の病院で「高齢で無排卵だから他の人から卵子をもらい体外受精をしましょう」と言われ当院に来られた方は現在ご自分の卵子で妊娠をごく普通にめざしています。

 

その女性が結婚するまで系統立てて管理をすればそういった事も防げ、妊娠も可能です。残念ですが、医療も少し混乱しているようです。