不妊症とは?
一組の夫婦が、 結婚後普通の性生活を送りながら、一定期間を経ても妊娠成立をみない状態をいいます。
世界的には約3日ごとのセックスを1年間続けても妊娠しない場合を不妊症とします。日本人にこの頻度は無理なので、 排卵日付近に数回セックスを行い、1年経過しても妊娠しない場合を不妊症とします。
治療に大事なのは、まず原因究明です。妊娠するには精子や卵子の質が良く、卵管や子宮の機能が正常であることが必要です。 両側卵管閉塞や無精子症なのに、タイミング指導や子宮内受精(旧人工授精)をしても妊娠はしません。どこが悪いか明らかにし、 原因に合った治療をすることが時間を無駄にしないコツです。
2016年に当院で妊娠された450名の方の不妊治療法を解析したところ、30歳以上で1番多い不妊原因は、 卵子の未成熟と質低下です。質の良い成熟卵を排卵誘導することで、40%の方が妊娠しています。次に多い原因は卵管障害です。 卵管が狭窄している方には通水通気、卵管が詰まっている方は日帰りの卵管形成術を事前に行うことで20%が妊娠されていました。 精子異常がその次にあります。疲れ切ったご主人の精子を良い状態にもっていく完璧な方法はありませんが、 性欲を増加させ質の良い精子を増やすサプリや漢方、生活指導を行います。精子があまりに状態が悪い場合は、体外受精が必要で、 顕微授精も含めた体外受精で40%の方が妊娠されていました。体外受精の妊娠率も近年高くなってきていますが、 出産時の大出血が多く、不必要に行うのは禁で、はっきりとした原因が無い場合は、タイミング3周期、 子宮内受精3周期で妊娠成立しない時に初めて考える治療です。また、体外受精は卵子精子の質を良くする治療ではないので、 質改善は別途必要です。
不妊症の原因
内分泌性不妊・・・・ホルモンの分泌に異常が生じている場合
1無排卵症 | 排卵障害 |
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2多嚢胞性卵巣症候群 | 排卵障害 |
3高プロラクチン血症 | 排卵障害 |
4黄体機能不全症 | 着床障害 |
卵管性不妊・・・・卵や精子の輸送に異常が生じている場合
1卵管閉鎖 | 感染症、子宮内膜症による受精障害 |
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2卵管水種 | 感染症、子宮内膜症による受精障害 |
3卵管周囲癒着 | 子宮内膜症によるpick up障害 |
子宮性不妊・・・・内膜の発育に異常が生じている場合
1子宮奇形 | 着床障害 |
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2子宮内膜異常 | 着床障害 |
3子宮腫瘍 | 着床障害 |
4内膜癒着(アシャーマン症候群) | 着床障害 |
頸管性不妊・・・・精子の保護に異常が生じている場合
1頸管粘液分泌不全 | 受精障害 |
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2精子と頸管粘液の免疫学的不適合 | 受精障害 |
子宮内膜症・・・・女性特有の疾患
男性因子不妊症・・・数、機能、射精などに異常が生じている場合
1造精機能障害
2精子輸送路通過障害
3性機能障害
4精子異常
不妊症の検査
検査は、あなたとご主人の二人が対象になります。おもな目的として、排卵は起こっているか、卵管は通っているか、精子は元気かなどを検査致します。
またこれら以外にも、子宮内膜症、自己抗体、抗精子抗体なども検査致します。
次にあるのが当院で実施している検査です。
女性因子の検査
- 内分泌の検査
- 血液検査
- LH(横体化ホルモン)
- FSH(卵胞刺激ホルモン)
- プロラクチン
- エストロゲン(卵胞ホルモン)
- プロゲステロン(黄体ホルモン)
- T3、T4、TSH(甲状腺機能検査)
- 基礎体温
- 超音波検査
- 血液検査
- 卵管の検査
- 通気試験、通水試験
- 子宮卵管造影(HSG)
- 淋菌、クラミジア検査
- 子宮の検査
- 子宮卵管造影
- 子宮ファイバースコープ
- 超音波検査
- 頸管因子の検査
- 頸管粘液検査
- 着床因子の検査
- 基礎体温
- HCG
- 超音波検査
- ホルモン負荷試験
- ゲスターゲンテスト
- LH-RHテスト
- TRHテスト
- 免疫的検査
- 抗精子抗体
- 抗核抗体
男性因子の検査
- 精液検査
- 精液量
- 精子濃度
- 運動精子率
- 奇形精子率
- 精子機能検査
- 抗精子抗体培養検査 *SST 24時間後の精子の生存率
- アクロビーズテスト *先体反応の検査
精液性状態は、だれでも多少の変動がみられます。禁欲期間の違い、体調、精神的ストレスなどによります。ですから、一度だけの検査で診断できない事があります。
不妊症の治療方法
不妊症を治療するうえで、欠かすことのできないのがこの技術です。
ART(Assisted Reproductive Technology)と呼ばれ、妊娠成立のために行う補助技術です。
主に人工授精、体外受精などがあります。これらは、受精が成立しやすいように手助けをすることが目的です。
AIH(人工授精)
人工授精とは、受精を目的に精子を人工的に女性性器内へ注入することをいいます。「人工」という名称にこだわりがある方もみえますが、精子を送りこんだあとは、受精も着床も自然妊娠と同じように行われます。
精子の正状が不良な方、頸管粘液が不良な方、抗精子抗体が陽性の方、性交障害がある方、原因不明不妊やAIHを希望する方が対象になります。また、必要に応じて排卵誘発療法を行います。精子の量が少ない方は、精子洗浄液で洗浄した後、精子を濃縮してから行います。
保険が適応されていませんので、自費になります。
IVF-ET(体外受精 胚移植)
体外受精は、卵管が詰まったり、子宮外妊娠で卵管をとってしまったりして、自然な形での妊娠が不可能になった人のために考えられた治療法です。
今日では適応範囲が広がり、卵管性不妊以外に男性不妊、免疫性不妊、原因不明の機能性不妊が対象となります。
また、体外受精の目的は「妊娠」ですが、「検査」として大きな意味があります。つまり、卵と精子がうまく受精しているかは体内でのできごとであって、それを確認することはできませんでした。しかし体外受精は、受精を確認することができ、不妊の原因の受精障害をみつけることができます。
卵子と精子を体外に取り出して受精させ、受精した卵(胚)を子宮に戻します。順調に行けば、約2週間後に妊娠反応が確認できます。しかし、すべての人が順調に行くわけではなく、一番の問題点とされています。また、質の良い卵をたくさん作るために排卵誘発剤を使用します。よって、副作用も注意しなければなりません。希望される方は詳しい説明をお聞きください。
保険が適応されていませんので、自費になります。
1卵巣刺激 2採卵 3媒精・体外受精 4胚移植 5黄体期管理 |
ICSI(顕微授精法)
主に男性不妊の方が対象となります。精子の数が少なかったり、動きが悪い精子はなかなかうまく受精をしてはくれません。
それで受精を手助けする為に、顕微鏡を使用して卵子に精子を注入すると受精が成立致します。卵子と精子のクオリティが良ければ高い受精率が望めます。このように精子の数が極端に少なくても、この方法を用いれば妊娠が可能となります。
胚盤胞移植法
体外受精は、通常三日目の4分割の状態で子宮へ戻されます。
自然の状態で考えればまだ、卵管にいる状態の卵子となり、子宮には存在しない卵子を子宮に戻すことになるわけです。胚盤胞移植とは4分割で移植せず、卵子の培養を体外でさらに続け、より自然に近い状態で子宮に戻すことになります。
この方法は高い妊娠率を求めることができ、また移植胚を選別することができて多体妊娠を防ぐことが出来ます。しかし、一方で4分割の状態から胚盤胞まで発育しない場合があります。つまり移植胚が無くなってしまうことです。当然妊娠は望めなくなります。
卵管鏡下卵管形成術
不妊症の原因の中でも卵管のトラブルによるものが高い割合を占めています。卵管は卵子を運ぶ大切な器官ですから、卵管が詰まっていたのでは自然妊娠は期待できません。自然妊娠につなげるためには卵管の通過性を回復する事が必要です。そして、卵管の通過性回復のために卵管鏡下卵管形成術があるのです。
※身体への負担の少ない手術ですが、事前検査などで、この手術を受けられないと判断される事もあります。
卵管鏡下卵管形成術は保険の適用が受けられ、日帰りも可能です。
- 通過性回復手術の成功率 70%
- その後の妊娠率 20%
細い内視鏡(卵管鏡)を内蔵した 細い管(カテーテル)を用意します |
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カテーテルを膣から子宮へと 挿入し、卵管に近付けます。 |
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カテーテルの風船(バルーン)を 膨らませて、卵管の中へ送ります。 |
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詰まっている所を広げます。 | |
卵管内の様子を卵管鏡を使って 観察します。 |
FTカテーテル装置 | |
先端部 |
子宮ファイバースコープ
子宮内膜ポリープは着床障害、不妊症の原因になります。
不正出血があってポリープの疑いがある場合は、生理7日目位で検査及び切除手術を行います。
ポリープ
カメラで子宮内を観察し、ポリープ等を切除する日帰り入院の手術です。
ファイバースコープ