さて、昨年の体外受精の妊娠率は、フレッシュで卵を戻した場合で28%、凍結受精卵を戻した場合はなんと44%の妊娠率となりました。つまり、採卵した卵子が10個あれば、フレッシュと凍結卵の2回は少なくとも戻せるということで、一回の採卵で70%以上の方が妊娠できるということです。これは、ここ2年の凍結法の革命的進歩によるもので、10年前の凍結卵妊娠10%の時代を思うと格段の進歩です。

ですが昨今、その妊娠率の上昇から、お手軽に体外受精に飛びつく患者さんが増えています。またそれに対し、まともな不妊治療なしで、「安くするから体外受精しましょう」とか、妊娠率の低い一個採卵を、「自然だから体外受精を早くやりなさい」とか、モラルが欠落した薄利多売の商売人医者がでてきており、残念な状態になっています。

体外受精は自然ではないのです。自然で妊娠できない方達がしかたなく行なうものなのです。自然でない理由は、体外受精は完全に遺伝子が成熟する前の卵子を採取してしまう可能性があるために、遺伝子病の発生を否定出来ないのです。安全性は確立されていないのです。
※当院では、ホルモン値解析にてほぼ完熟卵子で体外受精や人工授精を行っていますが、 それでも否定しきれません。

卵管が閉塞された方が、「卵管形成なんぞでは妊娠しないので体外受精するしかない」と、よそで言われ、困って来られますが、当院では現在までに、FT手術によって43人の赤ちゃんが産まれており、手術後30%の方が自然妊娠されています。卵管閉塞も即IVFし てはいけないのです。人工授精やタイミング療法のレベルで、患者さんの60%は妊娠できるのです。

更に言いますと、世の中には、IVMという未熟卵子で体外受精をおこなっている施設がありますが、遺伝子活性が未熟な卵である事から、まだ危険性の高い方法で、行なうべきでないと考えられます。特に、過剰刺激症候群が危険だという理由でIVMを行なっているのですが、IVMを現時点で実験以外に行なう必要は、全くないのです。

話がそれました。とにかく皆さんには、通常の妊娠を頑張ってから体外受精を考えて欲しいのです。当院も、体外受精もレベルアップさせますが、それ以外の自然妊娠の治療をさらに改善させて行きます。がんばりましょう!!

 

医学博士 高橋誠一郎

昭和56年3月 岐阜大学医学部卒業
昭和60年4月~昭和61年3月 岐阜大学医学部付属病院医員
昭和61年4月~昭和63年3月 県立下呂温泉病院産婦人科医長
昭和63年3月~平成元年6月 岐北総合病院産婦人科部長
平成元年7月~ 高橋産婦人科院長

 

 

 

 

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