ドクターズコラム FTカテーテルによる卵管形成術のあたらしい方法と考え方

今回、FTカテーテル卵管鏡下卵管形成システムを、公立病院も含めて岐阜地区で初めて常設(2004年1月現在)導入しました。
このカテーテル手術は、いままで顕微鏡下で数時間をかけやっと行っていた形成手術を、より簡便にかつ緻密におこなえるものです。
さらに当院では、より患者さんへの日常生活への影響を減らすべく、日帰り手術を可能とするため、内視鏡を使用しないで行う方法を独自に改良し行い良好な結果を得ています。
昨今、内視鏡手術は増加の一途ですが、視野不良や止血困難による医療事故が後を絶たず、内視鏡手術の危険性が叫ばれています。従って、今回内視鏡抜きで卵管形成が行えるようになり、安全性が格段にアップし日帰りを可能とすることが出来ました。

今回、このシステムを導入するきっかけは、体外受精偏重の現在においても、体外受精で妊娠されないまま高齢になられた卵管閉塞の患者さん達の存在です。当院でも、400人近い赤ちゃんが体外受精によって誕生されましたが、それに伴い、注射を大量に使用しても多くの卵子ができない方、自然周期の一個採卵で何度もチャレンジしてもなかなか結果の出ない方々が次第に増えてきています。
もちろん体外受精のさらなる改善によっても研究改善はし続けていますが、より可能性を広げるために別の方向からアプローチも必要と考え、導入に至りました。

この手術の卵管開通成功率は90%、妊娠率は手術後一年で20%と慶応大学では言っています。始めは私も若干疑っていました。ですが、ここまで成功率95%、妊娠例も4ヶ月で20例中3例と、なかなか順調です。特に、高齢の方より、閉塞したての若い患者さんの方が妊娠率は良いようで、従って、クラミジアなどの卵管炎後や子宮外妊娠後早期に繰り返し行うといった形の治療法にいずれは変わっていくように思います。

 

これまで行ってきた上で、この方法のメリットとデメリットをまとめてみます。

メリット
  1. 日帰り手術で時間的拘束が少ない
  2. リスクがほとんど無いので繰り返し行える
  3. 複数の部位で狭窄していても、対処できる(顕微鏡下吻合手術では、数カ所は行えない)
  4. 妊娠率が、吻合術以上に高い(ただし約20%)
  5. 健康保険が効く
  6. 体外受精以外での妊娠を強く望まれる方には、有効な手段

 

デメリット
  1. 卵管周囲の癒着には、対処不可能である(子宮内膜症の著しい症例には不向き)
  2. 卵管溜水腫では、開通しても妊娠率不良
  3. 手術後、妊娠の成否を待つための時間が必要(6ヶ月妊娠無ければ、他の方法や再手術を考える)
  4. カテーテルの完成度が低く、かなり熟練を要する。
  5. 高価な卵管鏡とカテーテルが異常に壊れやすい(時に採算割れで医者泣かせ。このため普及しない?)

 

以上のことを 妊娠率と、必要な時間のあるなしを考えながら現在治療に取り組んでいます。